ちょっと我侭なのかもしれない。反省しよう。鳩山郁子展はご本人とお話が出来て幸せでした。ヴァニラ画廊を含めて明日にでも忘れないように感想を書こうと思う。
ヘンリー・ダーガー展では色々と思うところもありました。元々、わたしにとってのダーガーの魅力とは、作品そのものと同じくらいに、その背景の物語への憧憬が強いです。孤独な一人の男が小さな部屋でひとつの世界を構築していったという事実。そしてその構築された世界とは、外界と全く隔絶されたものというわけではなく、コラージュやトレースなど世界に氾濫するカケラを集め、それをピースのように自らの王国に当て嵌めて造られていたということ。『創造』ではなく『世界の再構築』と言えるのだと思います。少女たちを自由にメタモルフォーゼさせ自由に惨殺する。ダーガーは孤独な人間でありながら、神でもありました。作品の色やバランスなどにも感嘆するものがありますが、やはり、その物語の部分に強く惹かれます。
今回の展覧会が開かれるとなってからの、各誌上メディアなどでのダーガーの取り扱われ方には少しの違和感は覚えていました。例えば、『装苑』での“カワイイ”特集に取り上げられているのを見たときは「カワイイになるのかあ…?」と思ったりしました。実際に今日行ってみて、それらのことが腑に落ちた気がします。というのも、展示されている中にダーガーの特色の一つともいえる残虐なイメージの作品はなかったからです。美術館の方に理由を聞いてみたところ「今回の企画としてはダーガーの夢の世界をみせたいということで、凄惨な作品は避け平和的な作品を選びました」との返答を頂きました。
「そういう売り方か」というのが正直な感想です。穿った見方なのかもしれません。でも展示する側が恣意的に作品を選別することはいかがなものかと思います。*1
以下に澁澤龍彦『快楽図書館』の「ユートピアとは「探す」ものか?」からの引用。
佐々木斐夫氏の述べている通り、「過剰な自信や過度の不安感や危機意識は、いずれも歴史の正当な進展に添って図られるべき社会形成のためには、生産的な要因とはなり得ない」であろう。当たり前である、だからこそ、ユートピアとはつねに非生産なのであり、非生産的でなければならないのだ。
世の中には、生産亡者としか名づけようのない人間がいるらしい。生産的なものはすべてよしとする信仰の持主である。彼らは、非生産的を怖れるあまり、文学や芸術まで、生産の概念で律しようとするから始末が悪い。
ヘンリー・ダーガーはまさしく非生産的なユートピア人間と呼べるのです。
*1:作品選びの時点で恣意的にならざるおえないこともわかりますが、本質そのものを隠蔽の形で歪めてよいのかということです。
循環気質アストロマニア
三代目澤村田之助といえば、脱疽に侵され左足を切断、その後も病魔は進み最終的には四肢切断となっても、舞台にあがり続けた美貌の女形。性格は、酷く驕慢であったと伝えられています。片足から両足、両手と失いながらも演じ続けた舞台は盛況続きでしたが、芸以上に、凄惨美や嗜虐的な欲望が、客を強く魅了したのだろうことは想像に難くありません。最後は鉛中毒による発狂死でした。
皆川博子の「花闇」は彼のその壮絶な生き様を題材にした小説でおすすめです。
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「ゾディアック」みたいなあ。
【公式】http://wwws.warnerbros.co.jp/zodiac/
【事件の概要】http://yami.main.jp/zodeakku/zode.html
犯人には自己顕示欲が強いというだけであまりカリスマ性などは感じないのだけれど、未解決事件っていうのは「切り裂きジャック」と同じく色々な想像が出来て人々の心を捕らえ続けるところがありますね。
レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の作品「洗礼者ヨハネ」は今では両性具有絵画の代表的存在として知られている。男性にしては丸みを帯びたなまめかしい体躯。男にも女にもみえる容貌は美しく、聖者というにはあまりも淫靡な笑みを浮かべている。そして、天を指差すその姿は、道を示すというよりも、邪悪な意図すら感じさせる。
多くの画家が描いたヨハネが逞しく思慮深さを瞳に湛えた男であるのに対して、ダ・ヴィンチはなぜこうも妖しいヨハネを描いたのだろうか。わたしの想像でしかないが、おそらく、ダ・ヴィンチにとって完全なる美とは男と女、聖と邪など相反するものが融合した状態であり、最後にそれを具現化しようとしたからではないかと考えている。
人が「美しい」と褒めるとき、その対象が女性か男性かでは連想する姿は大きく異なる。女性の美しさ、男性の美しさが違うのは当たり前のことだからだ。
けれど、少年や少女の場合においての「美しい」は同線上のものと思う。例えば、わたしが敬愛している伊藤潤二、丸尾末広、山本タカト、彼らの描く美少年と美少女はときに一卵性双生児のごとく似ている。大人の男性を描くときの表現手法を見れば、それが描き分けの問題ではないということはよく分かる。少年に対しても少女に対しても、理想的な美の基準が同じであるがゆえのことなのだろう。
衆道趣味が盛んだった時代、少年の美しさは桜に例えられたりもした。美しく咲いて散っていく様が、少年美のはかなさと重なるからと云う。
しかし、わたしは少女においても、男性の「それ」ほどではなくとも、脂肪に包まれていく身体はかつての軽さは失われ、すらりと伸びた腕や足は重みに囚われていく、その変化には哀しいものを感じさせられる。
男性は鋭角的に、女性は曲線的となり、もはや、そこに性の境界が混じりあうことはない。
わたしが「両性具有者(アンドロギュヌス)」に惹かれるのは、二次性徴の否定とともに肉体的には成熟した体躯を持ち得る、極めて人工的な美を結集した存在だからだ。ユートピア憧憬と同じく、人が考えうる限りの美しさを求めるその観念自体に強い魅力が内包されている。
「モナリザ」や「最後の晩餐」などさまざまな傑作を生み出したダ・ヴィンチだが、彼にとっての最高傑作は「洗礼者ヨハネ」だとわたしは信じている。
プラスティネーション講座
誰かがわたしに 言ったのだ 世界は言葉で できていると -山尾悠子作品集成より-
本当にその通りで、だから、もっともっと言葉を知りたいと思う。何度も咀嚼して味わって、それでも飽くことのない言葉をみつけたい。最近ではヴァニラ画廊で開催中の『人造乙女博覧会』に心臓打ち抜かれました。
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虚実の間(あわい)に生きたって言葉が良いなあ。皆川博子と津原泰水の対談がどちらのファンでもある身としてとても嬉しいのと、須永朝彦の語る「中井英夫」という人物が今まで語られている印象とはまた違い興味深かったです。単行本未収録作品が収録されていて、その中の『少女密偵団殿』というタイトルに心惹かれました。代表作『虚無への供物』もそうですが、言葉の選びようがとても好きだ。
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著者による「人形愛の精神分析」が面白かったので読んでみたい。
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美しい者たちが集っているならば、それをただ眺めていたいのだ。けっして中に入ろうなどとは思わない。その美の調和を崩してしまうのならば、足を踏み入れたとしてなんになろうか。観察者でありたいと思うことは、ある意味で、とても傲慢であり失礼だと自覚している。相手に心を求めていないのだから。それでもわたしはわたし自身の欲望の為に観察者でありたい。言うならば覗き趣味ということなのだろうなあ。
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すごい面白かった。予想以上。三津田信三の本を読んだのはこれが初めてで、装画とタイトルに惹かれて買ってみたのですが、大当たりでした。今年に入って読んだミステリの中では郡を抜いての一番なのじゃないかな。横溝正史を彷彿とさせる世界観。村の伝承や祟りなど、オカルト要素がふんだんに盛り込まれながらも、雰囲気でごまかすことのない本格推理。人物造形がまた魅力的であり、伏線が綺麗に回収されたときに味わえるカタルシスも素晴らしい。「このミス」の発表が楽しみになるぐらいの傑作本格ミステリです。おすすめ。
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ヴリル協會で三島戯曲の「黒蜥蜴」が文庫化してるのを知りました。買おう。
Hugo Strikes Back!さんのところで紹介されてる義眼が美しすぎる。日本の他の義眼サイトをちょこっと見てみたけれどここまで綺麗なのはなかなかなさそうです。目玉というのは外観に大きく作用するものなあ。わたしの右目は、先天性の眼瞼下垂で三白眼ような斜視のようになっているため黒目が半分まぶたに隠れてしまってるのですが、眼球自体はなかなか良い感じだと思うのです。そう考えると悔しい気分に!でも、わたし以外はわたしの目玉の魅力を知らないのだと思えば独占欲が満たされますね。
![]() | コミックビーム 2007年 07月号 [雑誌] (2007/06/12) 不明 商品詳細を見る |
新連載「パノラマ島綺譚」。丸尾末広さま!江戸川乱歩さま!万歳!!仕事終わって本屋に直行しましたが残り一冊でした。あぶなかった。買えてよかった。原作に忠実に描かれてますが元々の原作が妖しいので丸尾氏の絵と良く似合ってます。次号が待ち遠しい。
我慢出来ずに同じくビームに連載している「放浪息子」も読んでしまった。コミックス派なのに・・・。しかし、予想外の展開になってて驚きました。千葉さん好きとしてはもやもやと。さおりん頑張れ。
ガスマスクフェチのサイト
カタツムリの集団の中にこっそりとナメクジであるわたしがいる。皆は優しいので、この者は殻のないカタツムリなのだと信じて受け入れてくれるのだけど、自分がナメクジであることを自覚してしまっているわたしには、その優しさこそが重圧となってしまうのだ。
鳩山郁子 新刊発売記念展「ダゲレオタイピスト 銅版写真師」
会場:スパンアートギャラリー
期間:6月25日(月)~7月7日(土) 11:00~19:00まで。最終日は17:00まで。

行けるといいなあ。
獣人が好きだ。ケンタウロスとか件とかセイレーンみたいな頭が人で身体が獣というのが良い。反対だとあまり興味をそそられません。小学生のときに教室にあった本で、意地の悪い女が罰で体を牛にされて牛小屋で暮らす羽目となったという話がのっていて、その挿絵がたいそう魅力的に感じたのです。ところで、セイレーンとハーピーって今まで同じものを指すと思っていたのですが調べてみたらどうやら違っていて、セイレーンのが美しいのだそう。どっちが知名度あるのかな。
というわけ?で有名な蝋人形で作られた人体解剖模型写真が載っているこの本が欲しいのですよ。人体は不思議だ。
![]() | Encyclopaedia Anatomica: A Collection Of Anatomical Waxes (Klotz) (2006/03/10) Marta PoggesiGeorges Didi-Huberman 商品詳細を見る |