村山槐多詩集 山本太郎編 世界の詩70 より『美少年サライノの首』

美しき髪の毛が苦悩と歓喜と交々起る如く無暗に痙攣した。サライノの眼は、この蛇の霞の中にじっと輝いて居た。じっと吾を見て居た。どう見ても首だけであった。その瞳の底ではその深なさけが十二単を着かけて居た。一枚一枚とその美しい豊な裸形の上に重ねて行く。そして吾はじっとその皆の盛装をまって居た。実にこの少年の瞳は美しかった。その睫毛は、孔雀の尾の如く輝いた。吾は嬉しかった。ああ嬉しかった。この美少年は吾に敵意を有たないらしいのだ。その眼ははづかしさうに吾を見つめて居る。彼は無言で吾を愛して居る。唇は赤かった。火の様に。火の様。『サライノ。』『サライノ。』と吾が呼んだ時、サライノは微笑んだ。その眼は灯の様に輝いた。一箇のアダマントが吾眼の前にある様に。吾はまた呼んだ。『サライノ。』と。この声は大きかった。この夜半の暗に遠く遠く響きわたった。こだまはかへして来た。サライノの首はあでやかに微笑した。


オスカー・ワイルドの有名な戯曲『サロメ』をはじめ、愛する人の首、もしくは首そのものへの執愛を描いた物語は多い。美しい首とはとても蠱惑的なのだ。この詩の、美少年サライノの首が微笑する情景は、どれほど妖美だろうかと考える。
しかし、人は首だけがそこにあっても、性別を考えてしまうこととなるのだろうなあ。わたしの眼の前に首があって、その首が彫刻でも絵画でも本物でも良い、その首が、アンドロギュヌス的容貌の理想とするものであったのなら、わたしは男か女かどちらと判断するのだろうか。

その首が、わたしを見て微笑んだ瞬間、どちらであって欲しいと願うのだろうか。
2007.07.05(00:00)|両性具有コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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