「世紀末」には、「ヘルマフロディトゥス」は十六世紀初頭とまさに同一の傾向へと意識的に還帰しながら、ある(ネオ‐プラトニズム的な)「プラトンの性愛学(エロトロジー)」の本質的構成要件となる。ペラダンによれば、ヘルマフロディトゥスは「すぐれて芸術的な性」である。彼によれば、レオナルドは「ポリュクレイトスの規準(カノン)」を発見した。すなわち「アンドロギュヌス」である。これは芸術的な性である。なぜなら男性的なものと女性的なもの双方の結合であるからだ。レオナルドの「ジョコンダ(モナ・リザ)」がこの点で世界史的な寓意像と呼ばれる。彼女の中「もしくは彼の中」には、「男性のもつ頭脳的権威」と「魅惑的な婦人」のもつ官能性とが一体化しているのだ。「聖ヨハネ」像(レオナルドの作品)では、性はひとつの「謎」となっている。つまりレオナルドは「アニミズム的な」明暗法を発見したのである。ペラダンはその著『至上の悪徳』の中で、プリマティッチォの「美青年崇拝」とハドリアヌス帝の寵童アンティノオスのことを、レスボスの伝説的女流詩人と並べて讃美している。彼は小説『アンドロギュヌス』を書き(一八九一年)、その中で、俗人を寄せつけぬ「奇怪なマスク」、「男色的エロス」を(華麗な詩句で)謳っている。次のような詩句が見られる―「おお太初の性、おお孤独なる性、おお愛の絶対よ、形式の絶対よ。これぞ性を否定する性、永遠の性。おんみを讃う……アンドロギュヌスよ」と。
‐ 迷宮としての世界(下) 『ヘルマフロディトゥス』 ‐
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