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森馨人形を目の前にして欲望することを止められるものだろうか――

去年のヴァニラ画廊で催された『森馨人形展』では人形作家・森馨の手により創り出された何体もの少女(と少年)人形を拝見することが出来た。遅くなってしまったが、そのときの感想を記しておこうと思う。

レースのコルセットを身に着け微笑んでいる人形、薔薇に貫かれて肢体から血を流している人形、四肢を喪失しながらも微笑んでいる人形、裸身を露に処か遠い眼差しを湛えている人形、髪の色も瞳の色も、表情も容姿も様々な人形が並んでいるが、その美貌は共通している。巴旦杏の形をした眸、鼻梁のすっきりと通った小さな鼻、肉厚な花弁のようにぽってりとした唇、卵型の輪郭……。そして特徴的なのは、この人形たちには皆はっきりと形作られた性器が拵えられている。森馨人形は美しい。美しく、象牙のように滑らかなエロスの結晶だ。

一体の人形を前にする。控えめながら形の良い乳房はばら色に彩られて、この乳房から滴る乳は薔薇の香りがするのではないだろうかと思う。人形の両の足の間は小さく隆起していて、甘い蜜が溢れる蘭の花のような、琥珀のなかに潜むエロティシズムにも似た、蠱惑的で侵しがたい禁忌に誘われる。人形の硬い肢体の内には仄かに灯る襖火が、冷たい身体を内側から熔かしていくような熱さが在るかのような錯覚をする。それは鏡と同じ作用を齎していて、つまりはわたしの内が熱く火照っているのだ。

映像作品も展示されており、ヘッドホンをあて機器を覗くと様々なシチュエーションで撮影された人形たちの写真が音楽とともに映し出されていった。眺めているうちに、一枚一枚の写真は自分が殺してしまった少女たちなのかもしれないと、恐ろしく甘美な妄想がわたしを支配していく。わたしはその妄想を肯定してみる。

少女(少年も含み)たちは紛うことなくファム・ファタルであり、エロティックな夢想に誘いながらもけっして触れ合い交じり合うことの出来ない聖処女だ。もし少女らが生身であったならば、少女の愛を得られないことに耐え切れず、もしくは少女を自分だけのものにするのだという抗い難い衝動に追い立てられて、いや、または、幾多の理由の中で、少女を殺めしまうだろう。少女は殺められてしまうだろう。あくまでも彼女たちの瞳の奥は空無であり、視線を、欲望を、そのままに受け容れてしまう存在だ。そのように深き瞳に己の姿が映されていることを認識してしまえば、少しばかりの狂気を心に宿すのは当然とも云えよう。

しかし、“もし少女らが生身であったならば”と書いたこの言葉は、あまりに多くの矛盾を孕む。なぜなら人形でなければ上記の魅力を持ち得ることは不可能だからだ。欲望を遂げるためには生を得なければならない、けれども人形でなくては欲望することはない。人形愛のパラドックスに陥りながら、森馨さんの人形は美しいと、ただその真実のみを心に刻み、ゆっくりと会場を後にしたそんな日であった。


眠れぬ森の処女(おとめ)たち (TH ART Series)眠れぬ森の処女(おとめ)たち (TH ART Series)
(2009/12/11)
森馨

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2010.01.29(01:02)|展覧会感想コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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