蝙蝠と蛞蝓の宴展覧会感想
> あや野・西川祥子・堀江ケニー個展 感想
YASUDA ART LINKで6月6日まで行われていた【 大あや野展“ゴミが咲く” /西川祥子個展 Logos /堀江ケニー個展 End of Days 13 】がとても楽しかったので感想をここに記しておきたく思う。

展示は、三人の同時個展ということで三部屋で展示が行われていた。

あや野
さんの展示室に入ると、室内の四方の壁いっぱいに作品が展示されていた。幼少の頃のお絵かきから現在の作品までが同線上に並んで展示されているのが面白い。作品からはエネルギーが溢れ出ていて、このエネルギーは幼児の持つ生命力に近しいように感じつつ、いや寧ろ小児性欲に支配されていた時代の開放感を再び取り戻そうとする欲望のエネルギーといえるのじゃないかなとも思う。展示室は脳内を晒け出すことで脳内麻薬の分泌を促すような一種の楽園が創り出されていて、その楽園は、例えば遊園地のように楽園の模造を追求しながらも大人の倫理の介入により暴力と性欲が綺麗に排除され整理整頓された世界とは違い(それもまた歪でとても好きではあるが)、欲望を限りなく純化して幼児退行世界へと到達していくことで、ひたすら笑いながら、泥の水溜まりに飛び込んで、蟻の群れを踏みにじり、口の周りを飴でべたべたに汚して奇声を発している子供の、成人ならば狂人や精神遅滞と見做されるのであろう行動をもう一度やりたいという欲求を喚起させてくる。そして、大事なことだと思うのはこの幼児世界は“女の子“の暴力的エロスで構成されているということだ。女の子であることは揺るぎがなく、アイデンティティの全てのようでもあって、そこから取り巻く世界が存在している。それが強いエネルギーを放つ源なのだろう。

西川祥子さんの作品は古い洋書や楽譜のページに線を書くのではなく焦がすことで絵が描かれていた。古い本に印刷されていた言葉は、焦げることによって連なりという規則を失い、意味ではなく形としての存在を主張する。それによって文字の象形の美しさが浮き彫りとなる。極めて視覚的な美の世界だ。セピア色の紙に焦げ茶色という色彩、インクの色、古本の紙質、描かれた天使や洋梨、薔薇などの絵が眼と脳を楽しませてくれる。書物は世界で、世界から言葉が失われること、紙が火によって消滅してしまうことは、けっして取り戻すことは出来ないのだとわたしたちは知っている。その事実により与えられた喪失感はノスタルジーとなって心に刻まれる。焦がすことで描かれているということは、喪失によって生み出されている美とは、ノスタルジーによって描かれているということと同意義なのだ。展示室でみた作品は、過ぎ去っていった様々な出来事が、痛みも悲しみも含めて美しいカタチとなりここに在るかのようで、綺麗だなぁと切なく思った。

最後に写真家であり音楽家でもある堀江ケニーさんの展示室に入った。壁には一列にモノクロの幻影的な作品が展示されている。そして真ん中には写真作品の中にも登場している天蓋付きのベッドが、大きな兎の頭が、林美登利さんのお人形や大きな時計が、絶妙な配置で飾られていた。アリスの飛び出す絵本やぬいぐるみも設置されており、その全てが完全に調和していて、アンティーク風の可愛らしい空間が創り出されている。「かわいい、かわいいかわいいかわいい……」と口のなかで何度も呟きながら眺めてしまった。堀江ケニーさんといえば、公園にあるタコ型などの奇妙な遊具と黒色すみれのさちさんを一緒に撮影した写真集『タコさっちゃん』が出版されていて、これはわたしのお気に入りの一冊でもある。人々が何気なく通り過ぎている場所に確かに在る不思議で奇妙なもの、何か異世界の匂いがするもの、を見つけ出す嗅覚とも言うべき感性があるからこそ、綺麗で可愛くてでもやっぱり不思議な世界、を表現することが出来るのだろうなと感じた。また作品を拝見したいと強く思いつつ室内を後にした。
2010.06.11(23:02)|展覧会感想コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
名前:
コメントタイトル:
メールアドレス:
URL:
コメント:

パスワード:
管理人だけに表示:
管理者にだけ表示を許可
プロフィール

古谷 葵

Author:古谷 葵

Blog title:
Koumori to Namekuji no Utage

箱詰人形などとも名乗っております。
怠惰な日々を過ごし中。
twitter:@hako_guru
mail:hako.zaregoto@gmail.com

猟奇唄
猟奇唄 (上) コシーナ文庫
猟奇唄 (上)間 武

三行詩集『猟奇唄』の表紙絵と挿絵を描かせていただいてます。
取扱書店:ジュンク堂池袋店/大阪中崎町・書肆アラビク/アマゾン
書肆CAVE
箱詰人形セレクト

ギャラリーCAVEさまのオンライン古書店<<書肆CAVE>>にて、わたくし箱詰人形がセレクト致しました“箱詰人形セレクト”なるカテゴリを設けていただいております。
カテゴリー
月別アーカイブ
リンク
ブログ内検索
RSSフィード
Ajax Amazon