蝙蝠と蛞蝓の宴展覧会感想
> 横田沙夜の世界
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『喪失』

『喪失』と題されたこの作品を直に拝見したのは、大阪のアートスペース亜蛮人で開催された、『黒き血の宴~幻想耽美展』でのことだった。セピア色の色調に水彩絵具を滲みませながら丁寧に色がのせられて描かれている横田沙夜の作風は、見るものに柔らかく優しい印象を与える。下半身を露にし、ハサミで性器を切り裂いているかのような姿は、存分にエロティックでありながらも、不思議と厳粛な空気を纏っている。肉体は静謐さを湛え続けている。
横田沙夜の作品の魅力のひとつが“抑制”であるとわたしは感じる。どのような状況下にあっても少女たちは激しい感情を表層に出現させることはない。少女たちの表情を抑制することにより、精神内に広がる深遠さを垣間見ることができるのだ。そして、制御不可能な力によって創り上げられた世界に綻びを生じさせないために、細心の注意が払われているかのような緊張感が作品全体に張り巡らされている。

幼い頃に語り聞かされた童話には、血と暴力とエロスの匂いが潜んでいることを、子供たちは鋭敏な嗅覚で感じとる。窮屈に押し込められた“愛らしい子どものための世界”には綻びがあるということに気づかされる。それは救済へと変化する。横田沙夜の世界はその“綻び”そのものなのではないだろうか。だからこそ描かれた世界に綻びを生じさせることは、破綻へと繋がってしまう危険を孕んでいるのかもしれない。

少女から女へのイニシエーションとも云うべき、処女性を喪うことを示唆している『喪失』だが、その儀礼が少女性を揺るがすことはない。まるで咲くことを拒絶した蕾のように、少女は永遠の少女としての存在を誇示している。横田沙夜の少女たちは、目覚めることがない硬く閉ざされた蕾のなかで、甘い蜜の夢を紡ぎつづけているのだ。

横田沙夜サイト: christa
2011.02.11(13:47)|展覧会感想コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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